40周年リレーエッセイ VOL.6(関東甲信越部会) 

関東甲信越部会

倉持 香苗(日本社会事業大学)

地域福祉学会と私

 この度、日本地域福祉学会設立40周年の記念事業として企画されたリレーエッセイを執筆させていただくことになった。しかしお受けさせていただいたものの、私は名ばかりの地方委員で学会にほとんど貢献しておらず、申し訳なさと共に何を執筆したらよいだろうかと慌ててしまった。
 落ち着いて考えると、ありがたいことに貴重な研究の機会をいただいており、思いのほか学会と関わりがあることに気付いた。
 私にとって地域福祉学会といえば、忘れもしない「学会デビュー」である。当時私は地域開発と地域福祉(社会福祉)それぞれの領域における地域づくりの実践や理論に夢中で、自身が滞在していた南インドNGOの実践をまとめたり、社会開発の理論や、社会福祉領域において地域開発が注目されていた1960年代の資料収集をしていた。
 実は私は、高校生の時に『高齢化社会ときみたち』(岩波ジュニア新書、1988年)という三浦文夫先生のご著書に出会ったことから、福祉系大学に進学した。出版社宛に「著者の先生へ」と手紙を書き、これからは4年制大学で社会福祉を学ぶ時代が来るとお返事をいただいたことがきっかけだった。それから文通が始まり、初めてご夫妻にお目にかかったのはインド帰国後だった。その三浦先生が初めて私の研究にコメントをくださったのが、学会デビューの日。若いのに1960年代の開発の議論をよく知っているというお褒めの言葉と共に、当時の時代背景や国ごとに異なる社会開発の内容をよく調べる必要がある、これは一生かかっても終わらないよと、大変な勢いでコメントをくださった。研究者としての先生は優しさだけでなく厳しさもあり、身が引き締まる思いだった。
 それから約20年後。現在、私は2つの学会プロジェクトでお世話になっている。「地域福祉と全世代型包括的支援システム研究プロジェクト」では、全国の自治体を対象としたアンケート調査やヒアリング調査を通じて包括的な支援体制の整備状況を理解し、先進的な事例を学ぶことができた。現場の方々の熱意が地域の仕組みを創出する、時間をかけた丁寧な実践の積み重ねに思いを馳せた。そして「地域福祉アーカイブ研究会」においては、地域福祉学会創設当時に関わった先生方にお話を伺うため、主にワーキンググループで資料収集やディスカッションをおこなっている。大先輩にお話をお聞かせいただくという緊張感を抱きながら研究会に臨むプロセスは、忘れかけていた研究の醍醐味を再認識する機会となっている。
 いずれのプロジェクトにおいても、他大学の先生方や現場の方々と意見を交換したり現地を訪問し、大きな刺激をいただいている。ともすれば日々の業務に流されそうになる中で、それではいけないと「研究」に引き戻される時間である。時にはお互いの業務や実践に関する情報交換をすることもあり、学会参加と同様に、学会員同士の交流が大きな励みになっている。そして何よりも、個人では難しい規模の研究に関わらせていただくことで、凝り固まった視野を広げ、俯瞰的に自身の研究を見つめる機会になっていることに感謝している。
 やはり私は、学会にお世話になる一方の「学会と私」であった。今後はもう少し学会に貢献できるよう努めていきたい。

吉成 亘弘(東海村社会福祉協議会) 

 私が日本地域福祉学会に入会したのは、2008年東海村社会福祉協議会入職10年目の時でした。入会は、本会が大変お世話になった先生と先に入会していた先輩職員に勧められ、推薦をいただき本学会のことをよく分からないまま入会申込をしたことを覚えております。
 私が初めて参加した年次大会は、同志社大学で開催された第22回大会でした。全国各地から集まったたくさんの研究者や実践者、社会福祉協議会の職員が集まり、鼎談やシンポジウムでの会場の雰囲気、自由研究発表での発表者の熱意に圧倒されると同時に、地域福祉の奥深さや可能性を実感し、私自身大きな刺激となりました。
 筆頭研究者として初めて自由研究発表をした時の緊張感を今でも鮮明に覚えています。発表における質疑応答での質問の意味が理解できず、戸惑いながらのぎこちない返答、さらには共同研究者にフォローされるといった、何ともほろ苦いデビュー戦だったことを記憶しております。私自身,年次大会への参加や自由研究発表を重ねていく中で、住民主体による地域福祉のあり方を深く考えるようになり、本学会が発信する実践的な知見や研究成果にも触れ、理論と現場をつなぐ架け橋としての本学会の存在に強く惹かれていくようになりました。
 東海村社会福祉協議会としても、本会職員による自由研究発表や実践研究論文への寄稿など、また個人としては、地方部会委員という形で本学会に参画させてもらう機会をいただき、発表や議論を通じて、本会職員共々多くの学びを得ることができました。
 また、本学会では多くの研究者や社会福祉協議会職員との交流や情報交換をすることができ、実践での悩みなどを共有できる方々と出会えたことも、私にとって大切な財産となっています。本学会は、地域福祉の実践者としての成長を支えてくれる場であり、地域福祉に携わる者同士がつながる一つのコミュニティでもあるかと思います。
 本学会設立40周年という節目を迎えるにあたり、私は本学会がこれまで築いてきた「実践と研究の融合」という強みをさらに発展させてほしいと願っています。地域福祉は、制度や政策だけでなく、人と人との関係性や地域の文化に深く根ざした人々の生活や営みそのものであります。だからこそ、地域福祉を実践する者の声を丁寧に拾い上げ、理論的に位置づける本学会の役割は今後ますます重要になると感じています。
 これからも、日本地域福祉学会が地域福祉における探究と実践の場として、柔軟かつ力強く歩み、さらに発展していくことを心から願っております。

日本全国8地方部会リレーエッセイ

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