40周年リレーエッセイ VOL.3(中国部会) 

中国部会

堀川 涼子(美作大学)

わたしと日本地域福祉学会

 高校時代、偶然足を踏み入れた「障害児育成教室」。大学4年間続けた脳性麻痺の夫婦の生活支援のボランティア。私が住む地域(まち)にも多様な人が暮らしている。それらの経験から「障がいの有無にかかわらず、住み慣れた地域で当たり前に暮らす=ノーマライゼーション」への想いが私の中に芽生えていった。大学入学時には、「福祉=ボランティア」程度のイメージしかもっていなかった私に、「福祉」を「社会福祉」に置き換えてくださったのは、右田紀久江先生。「慈善・施し」ではない「社会関係の中で起こる課題に対し、社会に働きかける『社会福祉』」を学び、衝撃を受けた。さらに牧里毎治先生、定藤丈弘先生のゼミに入り、「ノーマライゼーション」「地域福祉」への思いを強くした。卒業後は、精神科医療ソーシャルワーカーとして、まだまだ偏見の壁が高い時代に、精神障がい者の地域生活のため、退院支援に努力した。その後院内に「在宅介護支援センター」が開設され異動することに。創設されたばかりのセンターの役割に戸惑う私は、センター職員の研修で小坂田稔先生から、その業務は「高齢者の個別支援のみならず、どんなに重い障がいや病気があろうとも、地域の中でのふつうの暮(く)らしのしあわせづくり=地域福祉の視点が大切」と学んだ。「誰もが住み慣れた地域の中で、その人らしく暮らせるよう、本人・家族と地域に働きかける。私の進むべき道はここにある」ととてもワクワクしながら仕事をすることができた。ただ、そのころは残念ながら、病院勤務であったことや、仕事と子育てに追われ、まだ本学会との接点はなかった。
 その後、小坂田先生にご縁をいただき、現在の大学で教鞭をとることとなった。最初に入会した全国規模の学会が本学会である。本学会の一番の魅力は、会員の半数が実践者であること。現場から大学に入った私は、「研究」に対する畏れがあったが、自分の実践をまとめ、意味づけして、拙いながらも学会発表したことは、研究に「理論と実践を繋げる」という意義を見出す機会となった。何よりも、発表に共感し、意見交換をしてくれる「仲間」がいることが大きな自信となった。毎年大会に参加するのは、研究との出会いとともに「人」との出会いが大きいからだ。恩師である岩間伸之先生との出会いも本学会だった。「個と地域の一体的支援」「本人のいる地域から始める」(まだまだ先生には、たくさん教えを乞いたかった。)竹川俊夫先生とは、同じ分科会でご一緒することが多く、後述するように本学会の中国部会でお世話になっている。また、学会前日のフィールドワークや、学会発表での出会いから後日、実践現場に伺い、多くの「縁」を紡ぐことができた。このような本学会の魅力を知ってほしいことから、毎年ゼミ生を連れて年次大会に参加している。同僚のゼミ生も併せて、時には20人を超える規模で参加することもあるが、学生なりに吸収して帰ってきていることを嬉しく思う。さらに、地方部会の岡山県担当委員になり、竹川先生のリードで、中国部会では、2023年に「地域福祉実践研究会」を創設し、「中国部会セミナー」と二本立てで「中国ブロックのキラリと輝く地域福祉実践をつないで学ぶ」ことをめざしている。研究会やセミナーの企画・運営を通して、近隣の県の会員と交流できることで、大きな刺激を受け、互いの地域を知り合い、地域福祉の向上をめざしていきたい。社会福祉は、とりわけ「地域福祉」は、「実践なき理論」も、「理論なき実践」もない。これからも本学会において、「現場の実践と理論をつなぐ」役割を作っていきたい。

仁志田 訓司(広島県社会福祉協議会)

 日本地域福祉学会との歩みと、これからへの願い

本学会との関わり
 私は日本地域福祉学会に入会して以来、中国部会を拠点として活動を続けてきました。私の実践テーマは「地域における介護人材育成」であり、外国人を含む多様な人材が地域で安心して学び、働けるような環境づくりを、実践の中で模索してきました。介護の現場は人材不足が深刻であり、その課題解決の鍵は地域における人材育成の営みの中にあると感じています。私自身、地域福祉への向き合い方として大切にしてきたのは、「優れた実践を帰納的に積み上げていくこと」です。理念や制度を先に押し付けるのではなく、現場で芽吹いた創意工夫や努力の結晶をすくい上げ、学び合い、共有することが、地域福祉の確かな力になると信じています。その積み重ねが、学会の根幹でもある「研究と実践の協働」を支えてきたのだと思います。そのことを強く実感した出来事の一つに、地域福祉優秀実践賞(2024年度)の推薦があります。私は広島から「鞆の浦・さくらホーム」の取り組みを推薦する機会を得ました。古い港町の小さな介護施設が、地域住民とともに歩みを重ねながら地域包括ケアを形づくってきた実践は、まさに地域福祉の力を体現するものでした。推薦した団体が受賞に至ったことは、自分自身の喜びであると同時に、中国部会のメンバーと共に学び合ってきたことの結実でもありました。この経験は、優れた実践が地域から全国へと広がり得ることを実感させてくれました。

本学会に期待すること
 40周年という節目にあたり、これからの学会に期待することは、地域福祉が直面する多様で複雑な課題に応えるために、分野横断的な知を結集し、新しいつながりを生み出していくことです。高齢者、障害者、子ども・若者の課題、外国人支援、災害対応、そして介護人材不足など、地域課題は複雑に絡み合っています。だからこそ、専門領域の垣根を越えて対話し、越境的な協働を生み出す「開かれた学会」であってほしいと願っています。40年の歩みに敬意を表しつつ、私自身もまた「地域に学び、地域に生きる者」として、現場で紡がれる一つひとつの実践を大切にしながら、その積み重ねを次世代へとつなげていきたいと願っています。地域に根ざした学びと豊かな実践が、これからも日本地域福祉学会の大きな力となることを信じています。

日本全国8地方部会リレーエッセイ

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