40周年リレーエッセイ VOL.7(東北部会)

東北部会
1.地域福祉学会と私
(1)学会設立と会員としての活動
1980年代に入って、わが国では「地方分権」や「措置権移譲」「公的介護制度」などが、国の経済計画をはじめ様々な分野で話題となっていた。そうした中で、日本地域福祉学会設立の動きが見られ、全国の関係者に設立の趣旨と呼びかけの文書が配布され筆者にも届いた。勤務地の事情で大会参加はできなかったものの、神奈川大会から毎年参加し、研究発表なども積極的に行うようにした。
東北における地域福祉学会活動の取組みは、最も会員数の多い宮城県の会員をまとめながら活動を展開し、やがて多くの研究者や実践者の協力を得ることによって、部会の年次大会を各県持ち回りで開催できるようになった。内容的には、東北各県の地域的な特性を踏まえたテーマを取り上げ、地域福祉推進上の課題と今後の方向性等について議論した。
(2)東日本大震災と地域福祉学会
2011年の東日本大震災では、甚大な被害が発生する中で、福祉対象者に対する災害時の対応のあり方が大きな課題とされた。東北部会は、発災直後から被災地の「現地レポート」を事務局を通じて会員への情報発信を行った。また、学会から東北部会に対し、災害復興に向けた実践研究・報告を目的に3年間に研究活動助成され、部会として研究活動報告書を全国大会において発表・配布した。またこれらをまとめて2015年の東北福祉大学の大会にて図書刊行を行った。これに関し、学会には心から感謝申し上げたい。多くの東北の関係者が実践報告や研究発表に参加し、交流を深めることができ、部会としても大きな成果であった。
2.今後に期待したいこと
日本地域福祉学会は、これからのわが国の地方や地域の行く末を考える上で、重要性の増す学会であろうと思われる。2018年に総務省が「2040自治体戦略構想検討会報告書」を出して以降、「消滅自治体」などの言葉が独り歩きして、今後の地方や地域のあり方が、あたかも羅針盤が失われ漂流するようにすら見えるところでもある。しかし実際には、少子高齢化や人口減少の時代に入ってなお、地域のつながり等に関する重要性を指摘する声は高まっている状況にある。
そうした中で国からは地域福祉推進支援を名目に、様々な制度や補助金等各種メニューが示されている。しかしここで留意すべき点は「制度は地域性を考慮しない」という点である。全国遍く浸透させるための制度は、山間部や沿岸部、寒冷地や過疎地、人口集中地域など、地域性を考慮しようとすると、地域特性を活かした地域再生ができなくなってしまう。そのため地域的要因を取り払って制度構築がなされる。このため制度を厳格に適用すると、地域性が損なわれてしまうのである。制度自体は十分に活用すべきではあるものの、個々の地域特性に根差した活用方法が求められよう。
欧米とは違った形で「地域福祉研究」が進むわが国では、ソーシャルワークも含めて、理論研究の余地が少なからず存在していると思われる。加えて、通常の社会調査の手法では把握できない福祉のニーズの把握の方法など、開発余地もあるだけでなく、災害や権利擁護など、関連領域と協働で研究すべき課題も少なくはない。
こうした点で、今後の地域福祉学会の活動に期待されるところは、決して小さくはないだけに、特に若手会員の皆様の今後の研究成果に大いに期待するところである。
日本地域福祉学会が40周年を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。これまでの歩みは、先達の諸先生方および会員の皆様の熱意と努力の賜物だと思います。これからも知の交流と発展の場として、輝かしい未来を築いていかれることを願っております。
私が地域福祉学会に入会したのは、2015(平成27)年でした。東北福祉大学社会福祉学専攻修士課程に入学して、今後の研究活動について構想をしていた時期でした。
大学院で研究を深めようと思い至った最大の理由は、当時注力していた東日本大震災津波における被災者(地)支援の取組みにおいて、私自身の地域福祉観に基づく実践にゆらぎを感じていたからです。未曾有の大災害で、従来の福祉支援対象者と新たに生じた対象者への支援という双頭の課題を目の当たりにしたとき、これまでの知識と経験では立ち行かない、と不安に感じていたことがきっかけでした。
東北福祉大学の建学の精神は、『行学一如(ぎょうがくいちにょ)』であり、『自利・利他円満』の哲学を教育理念としています。「学問研究と実践実行は全く一体である」という理念のもと、「それぞれの人間の持てる力を出し合い、互いに支え合いながら生き甲斐を感ぜられるような社会」を実現するという目標は、社会福祉協議会職員として被災地で活動する私の目標と合致するものでした。正直なところ学士課程ではあまり意識することがありませんでしたが、修士課程を経て、母校の建学精神を礎に研究と一体となった実践へ、歩みをすすめることができました。
東北学会では、恩師である都築光一先生はもとより修士課程を通じて知り合った先輩、同輩と再会することができました。地方に拠点を置く私にとって、分野を越えた交流や、世代を超えた対話を通じて、自分の視野を広げるためには、学会に所属することが必須であると感じています。釜石という地域に根ざした研究を進める中で、都市部や他地域の研究者との対話は、地域課題を俯瞰的に捉える視点を与えてくれます。
私が今後の学会に期待することは、本学会が使命としている「研究と実践のつなぎ」を更に具現化することです。そのためには、そうした「場」の多様な設営が必要と考えられます。そもそも若手研究者や実践者にとっては、参加費や移動費は負担となってしまいますし、地方在住者や育児・介護を担う研究者にとって、物理的・時間的な制約は大きな壁となりえます。このことから、さらにオンライン化をすすめて頂ければありがたいと考えております。






