40周年リレーエッセイ VOL.1(九州・沖縄部会) 

九州・沖縄部会

黒木 邦弘(熊本学園大学)

 40周年記念に際し、熊本からメッセージをお届けします。学会との関わりの中で特に忘れがたいのは、第26回大会(2012年6月)を熊本学園大学で開催できたことです。その意義を、改めてここから発信したいと思います。
 テーマは「新たなコミュニティの創造と地域福祉の課題―受苦からの再生」。この言葉は、熊本が直面してきた現実そのものを映し出しています。熊本は、公害の原点とされる水俣病を経験しました。本学の水俣学研究センター(以下、水俣学センター)が掲げる「水俣学の基本理念」は、まさに受苦からの再生に向き合う研究体制を示しています。たとえば「専門研究者のみならず、地域のアクターや被害当事者を巻き込んだオープンな研究体制を構築すること」、「被害現地に根ざした研究体制を構築し、現地に学び、現地にかえすこと」は、熊本から全国へ、地域福祉研究の大切な方向性を伝えるものです。さらに水俣学センターでは、「映像アーカイブ」を公開しています。「証言」「歴史」「自然」「教育」「記録」「未来」の6部構成からなる映像群は、熊本が積み重ねてきた記録であり、「失敗の教訓」を未来社会に生かすための提案でもあります。
 また、熊本は、公害だけでなく自然災害からの再生にも向き合ってきました。2016年の熊本地震では、水俣学センターに関わる研究者が中心となり、インクルーシブな避難所運営を実践しました。その経験は、第28回大会(2018年6月・静岡福祉大学)で全国に報告する機会を得ています。その後も、2020年の「令和2年7月豪雨」、そして2025年8月豪雨(8月24日時点で県内10か所に災害ボランティアセンター設置)と、度重なる災害に直面してきました。とりわけボランティア不足が深刻化し、センター運営が困難となる状況は、これまでにない変化です。人口減少・高齢化の影響、そしてボランティア観の変化といった課題を、熊本から全国へ問いかけたいと思います。2026年は、水俣病公式確認(1956年)から70年、熊本地震(2016年)から10年の節目の年です。熊本からの発信は、歴史の痛みとそこからの学びを背負いながら、地域福祉の未来に向けた希望を紡ぐ営みでもあります。
 地域福祉学会には、公害や自然災害といった受苦からの再生の経験を共有し、未来志向の研究体制をさらに発展させることを期待します。そして熊本からの歩みが、近未来の地域福祉学会をともに考える一助となることを願っています。

馬男木 幸子(福岡市社会福祉協議会)

 皆さん、こんにちは。九州沖縄部会の馬男木です。私は2000年に福岡市社会福祉協議会(以下、「福岡市社協」)に入職し、地域福祉に携わるようになり、今年で25年となります。
 私が初めて日本地域福祉学会の年次大会に参加したのは、2014年の第28回島根大会です。当時の福岡市社協は、行政・議会・地域の関係者から存在意義を問われ、失いかけた信頼を取り戻そうと必死にもがいている時期でした。全国各地の社協職員が入会し、自由研究発表をしていることを知り、「私たちも井の中の蛙ではいけない。年次大会に参加してみよう。」と同僚4人で申し込みました。社協職員が研究者の方々と同じ会場で議論し、また社協の取組みを研究テーマに自由研究発表をしているのを見て、刺激を受けたのを覚えています。その後、私は2019年に入会し、その年開催された第33回岡山・倉敷大会では、同僚とともに、「ふれあいサロンボランティアの参加動機と参加高齢者への効果」と題して、初の自由研究発表に挑戦しました。
 2022年より団体会員枠が創設されたことから、福岡市社協は2023年に団体会員となり、年次大会や地方部会の研修情報など、職員ポータルサイトで周知しています。学会員となってまだ6年ですが、思い出に残っていることが二つあります。
 一つは、2019年の岡山・倉敷大会で福岡市社協が「優秀実践賞」を受賞させていただいたことです。冒頭に書きましたが、福岡市社協にはとても厳しい時代があったのですが、信頼を回復するために組織全体の立て直しを図り、「受け身」から「攻め」の姿勢へと転換を進めてきました。活動基盤である地域の支援強化に向けたCSW配置や、終活支援、居住支援、社会貢献型空家バンクなど、新たな課題へチャレンジしてきたことを評価していただいたと知り、本当に嬉しかったです。現在も受賞式の写真が事務局長室に飾られており、福岡市社協の誇りとなっています。
 もう一つは、コロナ禍で開催された2022年の第36回福岡大会です。九州沖縄部会の先生方を中心に組織された実行委員会に私も参加させていただき、福岡市社協の職員もスタッフとして関わらせていただきました。感染対策のため、やむを得ずオンライン開催となりましたが、画面越しに全国の会員の皆さんとつながっていることが実感できました。次回、また地元で年次大会が開催される機会があれば、そのときは多くの方にお越しいただき、福岡の街並みや食も含めて、ぜひ楽しんでいただきたいです。
 最後になりますが、私にとって日本地域福祉学会は、全国の社協の仲間をはじめ、様々な視点で示唆に富んだ助言をいただく研究者の皆さま方とのつながりを実感できる貴重な場であり、今後も新たな課題へのチャレンジを続けていく必要性を改めて心に刻む、とても大切な場となっています。これからも、年次大会や地方部会の研修等に参加し、自己研鑽に努めていきたいと思います。

日本全国8地方部会リレーエッセイ

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