設立40周年特設サイト

学会創立40周年に向けて
日本地域福祉学会 会長 永田 祐

これまで本学会が大切にしてきたことを振り返ると、「実践と研究の往還」のためのプラットフォームとしての役割が、中心的な価値であったと考えられます。
学術刊行物としての学会誌に加え、刊行してきた「地域福祉実践研究誌」は、すでに16巻を数えます。また、実践研究に取り組む環境を整備し、その機運を高めるために、地方部会の活動も重視してきました。各地域において、学会に所属する研究者と実践者が協働して取り組むことで、実践研究に取り組む機運が生まれ、その地域での実践が活性化することが期待されます。そして、地域福祉優秀実践賞は、こうした地方部会の活動の中から地域のすぐれた実践を発掘し、ともに実践研究を進めていく仲間づくりの一環として位置付けています。さらに、2022年から設けた団体会員制度は、組織として実践研究を進めていくことを学会として応援することを目指しています。
こうした取り組みを踏まえ、40周年の記念事業として、研究者と実践者が協働しながら、社会や地域で求められる開発的な実践を生み出していくプラットフォームとしての役割をいっそう強化するために、「地域福祉実践研究」を中心に取り組んでいくことになりました。
これまで「地域福祉実践研究誌」では、実践から問いを立て、その営みを通じて多くの地域に根差した実践知を蓄積してきました。しかしながら、「地域福祉実践研究」を進めていく実践者にとっての本質的な意義や、その進め方、さらには実践研究を組織のマネジメントサイクルにどのように組み込んでいけばよいか、といったことについてまだ十分に会員の皆様と共有できていないように思われます。
そこで、これまでの「地域福祉実践研究誌」の蓄積を「リーディングス」(文献集)という形でまとめ、書籍として出版することを計画しています。論文の選定については、編集委員会(委員長:熊田博喜会員)、および『地域福祉実践研究誌』編集委員会(委員長:室田信一会員)を中心に、検討を進めていただいています。
また、既存の論文を編集するだけでなく、現在学会プロジェクトとして実践者の会員を中心に進められている「実践研究プロジェクト」(代表:藤井博志会員)の成果も加え、実践者、研究者(個人会員)、組織(団体会員)、そして地域(地方部会)において、「実践と研究の往還」を大切にするプラットフォームとしての学会の役割を、より明確に示していきたいと考えています。次年度の岩手大会では、会員の皆様に本書を手に取っていただけるよう、編集委員会および実践研究プロジェクトと協力しながら準備を進めてまいります。ぜひ、会員の皆様から多様なご意見を頂戴できれば幸いです。
さらに、学会では、40周年記念サイトを立ち上げ、地方部会ごとに、実践者と研究者のエッセイを掲載していきます。地域福祉学会の「実践と研究の往還のプラットフォーム」を実感できるような場として、40周年に向けた機運が高まっていくことを期待しています。
阿部 志郎 先生にきく -学会へのメッセージ-
2024年4月5日に横須賀キリスト教社会館にて、学会研究プロジェクト「地域福祉アーカイブ研究」のメンバーが阿部志郎先生にインタビューをさせていただきました。「今後の地域福祉学会に対する期待がありましたらお聞かせください」という質問に対して、阿部先生から以下の3点について学会として議論していくことへの期待が語られました。
1.公民協働のあり方 -行政と民間の役割と関係性
2.あらためて、地域を基盤とした福祉実践の意味を考えること
3.地域包括ケアシステム―包括主義における関係機関の対等性とは
阿部志郎先生からの学会へのメッセージには、今日、推進されている地域共生社会や地域包括ケアシステム、重層的支援体制整備事業など、行政-民間福祉事業者-地域住民が一体となった福祉社会の構築に対して、その方向性を根拠づけ、原動力となる「地域福祉の思想」の意義や価値を、今こそ再認識する必要性を指摘されていると考えられないでしょうか。
インタビュー内容の詳細につきましては、別の機会に学会員の皆さまに共有させていただきますので、どうぞご期待ください。